【初心者必見】新宿 北村写真機店 ジャンクフロアスタッフが教える「ジャンクカメラとレンズの見るべきポイント」|35mmフィルム一眼レフ編
はじめに
InstagramやXをはじめ「どこかレトロっぽい描写がエモい」ということから数年前よりオールドレンズの人気が上がっています。特に焦点距離が50mm付近の単焦点レンズが人気で、旭光学(ペンタックス)のスーパータクマー55mm F1.8やNikon Ai 50mm F1.4、CONTAX Carl Zeiss Planar T* 50mm F1.4などが有名です。
しかし、そういった人気なレンズは価格が上がり、状態の良いものからすぐに売れてしまうので「狙っていた商品がいつの間にか売り切れていた」ということもよくあります。
そんな時は一度ジャンクのコーナーを覗いてみると良いかもしれません。
ジャンクとは?
ジャンクとは「そのままでは使用できそうにない物品」を指す和製英語です。1.6億人が利用する世界最大規模のマーケットプレイスe bayでは”Junk”よりも日本語で「部品取り」を意味する”For Parts”という言葉が良く用いられており、インテリアとしての購入や、自身が持っているものが壊れてしまった際に故障してしまったパーツを交換するために買われることが多いです。
カメラのキタムラでは中古商品の状態によってランク分けされています。新品同様(AA)、美品(A)、良品(AB)、並品(B)と続き、ジャンクコーナーには”難あり(C)”の一部商品や故障品(D)が主に陳列されています。
ジャンクは選び方や撮影時の使い方などを工夫することで、価格以上の満足感を得られることもあるのですが、「どうやって探せば良いか分からない」、「どこを確認するか分からない」「ちゃんと写るの?」と思う方もいらっしゃると思います。
そこで今回は新宿 北村写真機店の3Fジャンクコーナーの山下さんに「フィルムカメラ初心者の方向けのジャンクの選び方や注意点」を聞き、実際に筆者もジャンクのカメラとレンズを購入して撮影してきました。
ジャンクカメラ・レンズの魅力
まずジャンクの魅力についてお聞きしたところ、2つのポイントを教えてくれました。
1. なんといっても販売価格が安い
ポイントの1つ目は「なんといっても販売価格が安い」ことです。
ジャンクは実使用に影響がある商品のため通常の中古価格よりも安い価格がつけられていることがほとんどです。
実は筆者も新宿 北村写真機店のジャンクコーナーでスーパータクマーの55mm F1.8とPENTAX SLというフィルムカメラを購入しました。購入時はどちらも税込1,100円でしたが、特にレンズは状態によっては売価が数万円する商品でもあるので非常にリーズナブルに感じました。
2.「お宝探しの感じで選ぶのが楽しい」
ジャンクといっても商品の程度は個体差が大きいです。それがご自身にとって許容できるレベルかどうか?撮るときの工夫でカバーできるか?など考えながら商品を見ていると、自身にとっては気にならない故障品を見つけられることもあるそうです。
例えばフィルムカメラのボディで故障個所が「セルフタイマーのみ作動しないが他は問題なし」という商品を見つけた場合、自身がセルフタイマーを使用しない撮影であれば一気に魅力に感じますよね。価格も安いこともありお宝探しに似た楽しさがあります。
選ぶポイントと注意点
価格が安いという最大の魅力がありますが、返品や交換ができないジャンクだからこそ慎重に選びましょう。山下さんにジャンクカメラ・オールドレンズを選ぶ際のポイントを聞きました。
ボディを選ぶときのポイント
1. 完全機械式か電池式かを確認
フィルムカメラのボディには大きく分けて完全機械式と電池式の2種類があります。かなりざっくりですが機械式は電池が無くてもシャッターが切れるカメラ※で、電池式は電池がないとシャッターが切れないカメラだと思っていただければOKです。
電池が入っていない状態で、カメラを構えたときに右手の親指部分にあるフィルム巻き上げレバーを巻き上げてシャッターが切れれば完全機械式カメラです。
完全機械式カメラは電池式と比べて故障する部品が少ないため、購入後も故障するリスクが比較的少ないためおすすめです。
2. カメラの背面裏蓋を開けてシャッターを切ってみる
今度はカメラ背面の裏蓋を開けシャッタースピードを変えて何回かシャッターを切ってみましょう。シャッタースピードと連動していればシャッタースピードの数値が小さいときはシャッターの開閉が遅く、数値を大きくすると開閉が速くなります。
山下さんのおすすめカメラ
ASAHI PENTAX SP(ペンタックスSP)
ペンタックスSPは1964年に旭光学が発売したM42マウント対応の35mmフィルム一眼レフカメラです。まだ露出計が一般的でない時代の中、普及モデルクラスの価格帯でありながらもTTL露出計を搭載したことで絶大な人気を誇りました。扱いやすいカメラのため初心者からプロまで幅広く愛され、全世界で400万台以上販売したといわれる名機です。
レンズを選ぶときのポイント
1. 光に向けてクモリや大きなカビが無いか確認
大きなクモリやカビは写真にうっすら膜がかかったような印象になるだけでなく、ピントを合わせるのも大変なのでなるべく避けましょう。天井のライトに向けるとレンズが良く見え、うっすら白く膜がかかっているものや蜘蛛の巣のようなカビがびっしり入っている場合はほかのレンズを選びましょう。
絞り羽根が動くかチェック ※できるレンズのみでOK!
レンズの後玉(カメラボディ側)にレバーやピンがあり、絞り羽根が動くレンズは絞り(F値)と連動するか確認しましょう。例えばニコンFマウントレンズであれば、レバーがついていることが多く、レバーを動かすとレンズ内の絞り羽根が動きます。この時にレバーが重く、絞り羽根の開きが遅い”粘り”があるものは避けましょう。
山下さんのおすすめレンズ
レンズはメーカーを問わず、50mmのF値の低い単焦点レンズが種類も豊富で一眼らしいボケ描写を楽しめるのでおすすめです。もしスナップを撮られる方であれば、35mm、花を撮られる方はマクロレンズなど、撮影する被写体が決まっている方は撮影シーンにあったレンズを選ぶのが良いでしょう。
お使いのカメラボディと同じマウントでないと使えないので、マウントの確認もお忘れなく。
描写チェック
選び方のポイントを元に購入するにしても気になるのは「実際に使えるか?」ですよね。
今回は筆者が実際に購入したPENTAX SLとスーパータクマー55mm F1.8で実際に撮影してみました。
PENTAX SLの状態はスローシャッターが不安定で、カメラの中に余計な光を通さないためのモルトがボロボロでした(購入後にモルト交換済み)。レンズは内部にゴミやホコリが大量にあり、小さなカビもある状態です。
PENTAX SL×Super Takumar 55mm F1.8
Body:PENTAX SL
Lens:Super Takumar 55mm F1.8
Film:フジフイルム 業務用100
撮影した日はどんよりとした曇りの日でした。フィルムはフジフイルム業務用100を使用して撮影しましたが、ハイライト・シャドー共に描写してくれており、レンズ内のゴミやホコリ、カビによるクモリなども写っておりません。
特にヘッドライトや、ヘッドライトからグリルへつながるシルバーのフレーム部分などメタリックな質感をしっかりと表現しています。
Body:PENTAX SL
Lens:Super Takumar 55mm F1.8
Film:フジフイルム業務用100
2枚目は梅の花を撮影したものです。めしべの黄色や花びらのピンク、緑も色がしっかりとのっています。背景のボケもタクマーらしいボケ感で被写体をしっかりと引き立てています。
Body:PENTAX SL
Lens:Super Takumar 55mm F1.8
Film:フジフイルム業務用100
雲一つない青空で気持ちのよい日に青空をバックにしてヤシの木を撮影しました。空模様は良かったものの風が非常に強く少しピントが甘いですが、それでも葉の先端まで分かるほど描写をしています。
ソニーα7 IV×Super Takumar 55mm F1.8
次はソニーのフルサイズミラーレスカメラ α7 IVにマウントアダプターを介してタクマー55mm F1.8を装着し撮影しました。
※ボディは完動品でジャンクレンズを使用して撮影した写真です。
Body:SONY α7 IV
Lens:Super Takumar 55mm F1.8
タクマーといえば温かみのある赤いリングが出るゴーストが特徴ですよね。
上の写真は虹のようなゴーストですが角度によってはリング状の赤い輪のような形など、さまざまなタイプのゴーストが出て面白いため撮影中にゴーストが出る位置を探していました。
ここ最近のレンズはゴーストや逆光時に白っぽくなるフレアをカットするためのコーティング技術がより発達し「いかにゴーストのない写真が撮れるか」を目的に作られていることが多いため、ゴーストやフレアを出すことが難しいことも。
ゴーストやフレアを表現の一つとすることで新しい作風を見つけられるかもしれませんね。
Body:SONY α7 IV
Lens:Super Takumar 55mm F1.8
次は被写体の目にピントを合わせたカットです。ピント面のシャープさと、背景の大きなボケ感が被写体を引き立ててくれています。
撮影時のF値は開放の1.8で撮影したこともありますが、ゴミやカビが入っていることを忘れてしまうほどしっかり写っているという印象でした。
Body:SONY α7 IV
Lens:Super Takumar 55mm F1.8
ミラーレスカメラにオールドレンズをつけて楽しみたいという方も多いと思いますが、今回使用したα7 IVはサイズ感もよく、ファインダー内でもピント位置を拡大して確認できることや手振れ補正もついているのでマニュアルフォーカスレンズを初めて使う方でも簡単に楽しめます。
おわりに
ジャンクと名前がついているものの選び方や使い方を工夫することでジャンクでありながらも”動品”のような感覚で使用できる可能性を考えるとコスパは非常に良いと思います。
正動品よりも価格が安い分、手に取りやすいので「これからフィルムカメラを始めてみたいけど高額で手が出ない」や「一本だけでもとりあえずオールドレンズを持っておきたい」など、カメラ好きの方はもちろん初心者の方にもおすすめです。
今回取材した新宿 北村写真機店をはじめジャンクを取り扱っているカメラのキタムラ店舗では、購入前に実際に手に取って確認ができるため、お伝えしたポイントを参考にぜひ自分にあった一品を見つけてみてください。
新宿 北村写真機店のHP・アクセスはこちら
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※機械式カメラの中でも明るさを測る露出計を使うために電池を入れるカメラもあります。