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特集・コラム

シトウレイ写真展 記念インタビュー(前編)

2020/11/30

シトウレイの作り方(前編)

ストリートスナップのカリスマ、シトウレイのオタク性

前田

今って、インテリとオタクの時代じゃないですか。なにかに熱狂する、その力が新しい仕組みを作っていく時代だと思うんです。
僕なんかは編集者という職業がら、ゼネラリストとして常に引いた視点から時代を見ちゃうから、ひとつのことに熱狂できる人がすごくうらやましい。
ここに登場するのはファッションに熱狂している人たちだと思うんですよ。

シトウ

そうだね、ファッションオタクの方に入るよね。

前田

ある意味ではオタクかもしれない。
だけど、みんな生き生きしている。シラけてないっていうか。この中の誰かが、新しいデザインを考え、表現者として次代のファッションを作っていくんだろうな。
なんて思って、とってもうらやましく思って見ちゃう。

シトウ

没頭できる人が?
私は、没頭しかできない、ゼネラルな視点で見れないんですよね。

前田

それでいいし、素敵だと思います。
ところで、シトウレイは学生時代文学少女だったとか。

シトウ

谷崎潤一郎、武者小路実篤、夏目漱石、もちろん三島も、です。

前田

何故に文学に目覚めることに?

シトウ

夏目漱石がきっかけ。高校2年で学校の教科書に夏目漱石の『こころ』が掲載されていて、突然パカーン!と。文学おもしろーいって。感動してハマりながら、ジャンルも広がっていったの。
ジャズも好き、ヒップホップも好き、クラシックも好き、みたいな。夏目も好き、三島も好き、太宰も読むといえば読む。

前田

でも一方で、『こころ』を書いた頃の夏目漱石の世界観と『坊ちゃん』の世界観って全然違うよね。

シトウ

なんか物語に惚れたら、作家に惚れてしまって、そうなるとその作家が作ったものは全部好きになる。『坊ちゃん』も好きだし、『こころ』も好きだし、『それから』も全部好き。

前田

なぜこういう文体になったのかも含めて知りたくなる感じ?

シトウ

そうそう。移り変わりが合って、「ここで身体、壊したんだよね、だからなのね、そうなのね」みたいな。

2人

(笑)

シトウ

「この人と結婚したんだ、そうなんだ~」みたいな。
作品はもちろん、その作家の歴史を全部知りたくなって、その人が残した作品を全部読んで。夏目を読み終わったら、その次に武者小路実篤についても全部知りたくなるみたいな。

前田

それが高校生の頃?

シトウ

高校と大学ですね。
高校が夏目で、大学がその他の人達にだんだん広がっていった。高校の時に夏目漱石を読んだのがきっかけで、文学部か国文科入ろうと思って入って。

前田

当然ファッションはファッションでその時々で熱狂して?

シトウ

全然!定番の雑誌を読んでたクチ。

前田

定番がダメとは言わないけど…いわゆる流行をキャッチアップする為に定番の雑誌を読む、とそんな普通の女子だったということ?

シトウ

「あ、今ピンク流行ってるんだ、じゃあこれを着た方が正解なんだ。」 と考えていたのが高校生の時。

前田

ということは、ファッションっていうより文学少女?

シトウ

そう、文学少女!

シトウレイさんの写真

文学少女がカメラを持って街を記録しはじめた理由

前田

どこからがシトウレイのファッション熱狂時代なんですか?

シトウ

大学に入ってモデルをし始めて、キラキラのファッション業界に触れ始めてからかな。
「自分もオシャレになりたいな」「オーディション行くのにこんなんじゃダメだ」って思ってオシャレするようになったんだけど、完全にフォロワーでしたね。
本当にファッションを伝えたり、時には一緒に作ったりする側に入ったのは、ストリートスナップがきっかけ。
それでファッションの価値観がガラッと変わった。

前田

ストリートスナップを撮り始めたとき?それとも、ストリートスナップというものに出会ったとき?

シトウ

撮り始めたとき。自分が主体者になった時にまたパッカーンと!

前田

その後自分でカメラを持って街へ出るようになったのはいつだっけ?

シトウ

大学を卒業してモデルをしているときに声がかかって。2004に『TUNE』に入ったのでその頃から。その時は当然カメラの扱い方もわからない状態でした。

前田

持たされたカメラは何でしたっけ?

シトウ

富士フイルムの645のデカい中版の単焦点。いつ壊れてもおかしくないような(笑)

前田

35㎜換算の50㎜レンズ?

シトウ

レンズがなんだったかすらも覚えていなくって(笑)

前田

でも絞り値は覚えてる(笑)

シトウ

F4!

前田

ISO感度は?

シトウ

64!もうないと思うんですが。最後の方はISO100、200を使い始めてたかな。

前田

とにかく言われたままに撮ってくる、というのがミッションだったと。

シトウ

そう。「おしゃれな人撮ってきて」っていうお題で、オシャレな人を撮りに行きました。で、気づいたのが、オシャレってなんだっけ?ということ。
オシャレな人ってほんわりと考えていたけど、わからなくなっちゃって、オシャレってなんだろうと考えていくうちに、オシャレに対する感覚みたいなものがまたまたパッカーンと開いたの。
特に原宿はそうなんですけど、本当にその頃ってすごい自由で、男の子もスカート履くし、女の子もバレエのシュシュみたいなのを普通に履いてるし。自由でタブーが無かったんです。
つまり、タブーがないってことは、正解もないなということに気づいちゃった。

シトウレイ写真展 記念インタビュー風景

ファッションは自由だ、ファッションは楽しい

シトウ

自分が正解と決めたものが正解なんだなって思ったときに、「ファッションって超自由!たのしい!」パッカーン!って。
それまではこれ着た方がいいとか、これはNGパターンとか、ファッションにはルールがあると思ってた。でもホントは、それが全部ないんだなってわかったら、
すごいわくわくする可能性みたいなものが見えてきたんです。自由だ、リベラルだ、比較しないんだと思うようになってた。
それまでは、この人より格好いいとか、私の方がイケてるとか、他者との比較でファッションを考えていたんだけど、比較材料がだんだん他者じゃなくて、自分になっていくのね。
昨日の自分より今日ちょっとおしゃれとか、昨日の自分と同じ格好したくないから、じゃあ今日は靴替えようとか、最近パンツばっかり履いているから今日はスカートにしようとか。
比較対象が自分になってきて、ますますファッションが楽しくなっていったかな。
そうなると、他者にも寛容になれるの。この人はこういう着方なんだ、あの人はこういう着方なんだ、かわいいねってなって全てのファッションを慈しめる、尊重できる。
それって人の尊重にもなると思うから、考え方はすごく変わったと思います。

前田

なるほど。
その一方でプロたちを相手に講演することもあるじゃないですか。そうすると、あくまでもジャーナリスティックな視点で分析をしないといけない立場にもいたりするでしょ?
「これからこれが流行る」とか、「これをこういう風に使いましょう」「これはこうです」というような発言が必要になってくる。そこの棲み分けは自分の中ではどうしているんですか?

シトウ

基本的にかっこいい人と思った人しか撮らない、好きな人達しか撮らないっていうのは意識しています。
例えば100枚撮っていたら、100枚の中の傾向とかテクニックとかを分析するようにしてます。流行っているから撮ろうとかはなくて、まずは好きっていうことが一番大事。

シトウレイさんのインタビューは、後編に続きます。

シトウレイさんの写真

シトウレイ写真展 記念インタビュー(後編)

現在開催中の、シトウレイ写真展「STYLE ON THE STREET from TOKYO and beyond」。先日トークイベントでもお話頂いた、クリエイティブディレクターの前田陽一郎氏を向かえ、シトウレイ氏にお話を伺った。(後編)

2020/11/30
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