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特集・コラム

新宿 北村写真機店のカウンターで、お薦めライカを味わい尽くす|Vol.029 ライカMP テリー・オニール

2025/02/10

カメラのキタムラレビューサイト『ShaSha』より転載

はじめに

皆さんこんにちは。ライターのガンダーラ井上です。新宿 北村写真機店の6階にあるヴィンテージサロンのカウンターで、ライカをよく知るコンシェルジュお薦めの一品を見て、触らせていただけるという企画、『新宿 北村写真機店のカウンターで、お薦めライカを味わい尽くす』。毎回どんなライカが出てくるのか予測不能な展開でお届けしていますが、今回もどんなカメラが出てくるのか楽しみです。

コンシェルジュのお薦めは?

今日お薦めライカを見立てていただいたのは、新宿 北村写真機店コンシェルジュの水谷さん。前回は、選りすぐりの寿司ネタのごとくカウンターの上にライカ アラカルトの数々を展開していただきましたが、水谷さんといえばスペシャル感のあるライカを推してくれる人という印象です。さて、今回はどんなライカが登場するのでしょうか。

英国の高名な写真家の名を冠したモデル

ライカMPテリーオニールの箱を手に持っている写真

「今日は、ライカMPテリー・オニールです」と、カウンターの上に登場したのは深い緑色の貼り箱でした。この箱の色からして普通じゃありません。ライカの基調色といえばブランドロゴに採用されている赤で、その地色は白や黒あるいはシルバーといった無彩色というのが定番ですが、こちらの箱は緑色。はるか昔にフィルム一眼レフのライカフレックスではM型ライカとの差別化を意識してなのかコミュニケーションカラーに赤の補色である緑を使っていた記憶がありますが、本品はレンジファインダー機の王道、ライカMPということからして緑色を使っていること自体が尋常ではなく、スペシャルモデル感が伝わってきます。

「こちらの箱の中身は、イギリスの写真家、テリー・オニールさんとのコラボレーションによる特別限定セットになります」

ブリティッシュグリーンにペイントされたボディ

ライカMPテリーオニールの箱から本体が見えている写真

蓋を開けてみれば、そこに収められているのは明らかに通常モデルとは異なる外装仕上げが施されたライカMPと交換レンズおよびカメラの貼り革と同色のストラップという3点セットでした。ボディは箱よりもさらに深い緑でペイントされています。

「テリー・オニールさんはイギリスの方なので、レーシンググリーンと呼ばれるイギリスのレースカーによく使われる深緑が好きなのだと思います」との水谷さんの説明をお聞きすると、確かに英国調の色合わせだなぁ。と納得できた次第です。これが日本の写真家のシグネチャーモデルだった場合、どんな色にしたらいいのでしょう? 赤白だと日の丸になってしまうので、濃紺とかかなぁと考えを巡らせていると、さらに大きな箱が出てきました。

大判のオリジナルプリントがカメラに付属

ライカMPテリーオニールに付属している大判プリントの箱を撮影した写真

こちらのセットにはテリー・オニールさんのオリジナルプリントが付属しており、写真とカメラの組み合わせで2018年に35セットが販売されたそうです。ちなみにプリントの総数は50枚で、写真だけ15枚も販売された模様。ところでテリー・オニールさんってどんな写真を撮っていた人なのでしょう?

「テリー・オニールさんは、デビュー翌年のビートルズを1963年に撮影。その後デヴィット・ボウイやエルトン・ジョン、ツイッギー、ブリジット・バルドーなどのミュージシャンやセレブのポートレートを数多く手掛けられ、エリザベス女王陛下も撮ったことがあるそうです。007の歴代ジェームス・ボンド役をショーン・コネリーからダニエル・クレイグまですべて撮っている唯一の写真家としても知られ、芸術的価値のあるポートレートの時代を切り開いた人です」

オードリー・ヘップバーンの未公開カット

オードリー・ヘップバーンのオリジナルプリントを俯瞰で撮影した写真

水谷さんの解説をお聞きしつつ大きな蓋を開けていただくと、そこに登場したのはエディションナンバーと作家本人の直筆サイン入りのオリジナルプリント。サイズは510×400ミリという大判で、被写体は何とオードリー・ヘップバーンです。

「テリー・オニールさんによるヘップバーンさんと鳩の写真は1960年代のなかばに撮影されたもので何バージョンかありますが、このカットはそれまで世に出てきていなかったものです。この写真が初公開のカットであることに加え、セットが発売された翌年の2019年にはテリーさんが亡くなられたので、本人のサイン入りのライフタイムプリントとしては最後の作品になったことにも価値があります」

ペイントと貼り革、クロームの組み合わせ

ライカMPテリーオニールとズミルックス50mm f1.4 ASPH.を並べて撮影した写真

それでは、あらためてライカMPテリー・オニールモデルを拝見していきましょう。ベースとなったカメラはライカMPで、通常モデルと機能的な差異はない35ミリ判のフィルムを使うレンジファインダーカメラでシャッターは機械式。露出計の計測と表示にボタン電池を使う仕様です。やはり最大の特徴は中身でなく見た目ですね。

「トッププレートと底蓋のパーツがレーシンググリーンでペイントされ、レザーはコニャックで色合わせが綺麗なカメラです。シャッターダイヤルやフィルム巻き上げレバーなどの部品はシルバーになっていて、ボディのトッププレートにテリー・オニールさんのサインが入っています」

特別なブリティッシュグリーンの差し色

ライカMPテリーオニールのセットになっているズミルックス50mm f1.4ASPH.を正面から撮影した写真

そして、付属するクロームのズミルックス50mm f/1.4 ASPH.は鏡筒が真鍮製で、手にするとずっしりした手応えを感じます。ちなみにレンズキャップも真鍮の無垢材を削り出した豪華なもの。特筆すべきは、レンズの絞り、距離(m表記の部分)、被写界深度目盛りにボディカラーと同じレーシンググリーンが入っていること。光学系の数字に緑色を採用しているライカのレンズはこれだけかもしれないですね?

「そうですね〜。思い当たらないです。サファリカラーのボディのライカにシルバーのレンズがセットになっているものでも、絞り値などの数字の部分はノーマルモデルと同じ黒でした」

まとめ

ライカMPテリーオニールにレンズを装着して天面から撮影した写真

ライカMPテリー・オニールは、2023 年6月に開催された42回目のライツ・オークションにご本人が所有していた27/50番のカメラが出品されて24万ユーロで落札されたこともあってコレクションカメラに位置付けられる品物ですが、どんな人に使ってもらいたいでしょう?

「カメラの希少価値もありますが、ブロマイド写真的に被写体にポーズを要求したりはせず、親密なコミュニケーションをとることで表情を引き出していくポートレートを撮ったことが評価されているテニー・オニールさんの写真や撮影手法に魅力を感じていただいている方に持っていただきたいと思います」という水谷さんの意見に賛成です。このカメラを持ち出すのは勇気が要りますが、とても良いポートレートが撮れそうな気がします。

ご紹介のカメラとレンズ

ライカMPテリー・オニール セット  価格  24,367,500円

※価格は取材時点での税込価格

案内人

ヴィンテージサロン コンシェルジュ:水谷浩之

1985年生まれ。憧れのカメラはM3J、M3ブラックペイント。

執筆者プロフィール

ガンダーラ井上プロフィール写真

ガンダーラ井上

ライター。1964年 東京・日本橋生まれ。早稲田大学社会科学部卒業後、松下電器(現パナソニック)宣伝事業部に13年間勤める。2002年に独立し、「monoマガジン」「BRUTUS」「Pen」「ENGINE」などの雑誌やwebの世界を泳ぎ回る。初めてのライカは幼馴染の父上が所蔵する膨大なコレクションから譲り受けたライカM4とズマロン35mmF2.8。著作「人生に必要な30の腕時計」(岩波書店)、「ツァイス&フォクトレンダーの作り方」(玄光社)など。編集企画と主筆を務めた「Leica M11 Book」(玄光社)も発売中。

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