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特集・コラム

新宿 北村写真機店のカウンターで、お薦めライカを味わい尽くす|Vol.031 ライカM3 ブラックペイント ファーストロット ブラックカウンター

2025/04/12

カメラのキタムラレビューサイト『ShaSha』より転載

はじめに

皆さんこんにちは。ライターのガンダーラ井上です。新宿 北村写真機店の6階にあるヴィンテージサロンのカウンターで、ライカをよく知るコンシェルジュお薦めの一品を見て、触らせていただけるという有り難い企画、『新宿 北村写真機店のカウンターで、お薦めライカを味わい尽くす』。さて、今日はどんなアイテムを見せてもらえるでしょうか?

ライカフェローのお薦めは?

お薦めライカを見立てていただいたのは、新宿 北村写真機店でライカフェローの肩書を持つ丸山さん。前回は1959年製のライカM3ブラックペイントのファーストロットという激レア物件を拝観させていただきました。丸山さんのお薦めしてくれる黒いライカM3は前回がラスボスと思いきや、なんと今回も黒いM3の登場です。

ブラックペイントのライカM3ファーストロットですが

ライカM3ブラックペイントブラックカウンターを手に取っているところを撮影した写真

「今日のカメラも黒いM3です」って丸山さん、またしても黒いライカM3なのですね。でも、いつもと同じ丁寧な所作ではあるものの、カメラを差し出す構えがいつもと違います。フィルム巻き上げレバーのあたりに注意が向くような角度で、そこから見出せる違いに気づいて欲しい様子です。

ええっと、これはストラップ吊り金具が福耳ということはブラックペイントのライカM3ファーストロットとお見受けしましたが、それって前回ご紹介いただきましたよね?

「この記事をお読みいただいている方には『またM3の黒か』と思われてしまうかもしれませんが、ライカM3ブラックペイントファーストロットの“ブラックカウンター”と呼ばれているものです」

ライカM3のフィルムカウンターは銀色が定石

ライカM3ブラックペイントの天面を撮影した写真

何度も見せていただいているのに物覚えが悪いので、もういちど黒塗りM3ファーストロットのおさらいをお願いすると「公式記録によれば製造番号959で始まるファーストロットと呼ばれるM3ブラックペイントは1959年製です。959401から始まり959500までの100台が製造されました」と、丸山さんの講座が始まります。

「M3ブラックペイントのファーストロットには、それ以降のロットと比較しますと大きな違いがあります。一番目立つのはストラップ吊り金具が通称“福耳”、海外では“ドックイヤー”などと呼ばれる部品であることです。違わない部分としては、ブラックペイントであってもフィルムカウンターは銀色の部品が使われていることです」ふむふむ、確かに黒塗り仕上げだけれど、カウンターの部分が銀色ですね。これが通常(といってもレアですが)のライカM3ブラックペイントのファーストロットということだそうです。

ごく少数存在するフィルムカウンターが黒いモデル

ライカM3ブラックペイントブラックカウンターの天面を撮影した写真

「それに対してこの個体は、本来ならフィルムカウンターが銀色であるのに全部黒い、通称ブラックカウンターと呼ばれるものです」

確かに、フィルムカウンターの部品まで真っ黒です。「ファーストロット100台の中に何台含まれているのかは不明ですが、かなり限られた台数しか存在せず、ごく稀に市場に現れるモデルになります。前回ご案内させていただいたファーストロットのM3ブラックペイントと同じ959~の番号帯の1台になります」

レアなファーストロットの中でもレア、すなわちレア中のレアですね!

「そうですね。この次のセカンドロットのブラックペイントにはもちろんブラックカウンターは存在しませんし、当時のエルンスト・ライツ社が公式に発表しているM3のブラックの中ではこのファーストロットの中で限られたものにしかブラックカウンターは存在しません」

ファーストロット最大の特徴は“黒い福耳”

ライカM3ブラックペイントブラックカウンターのアイレットを撮影した写真

「セカンドロットが1960年なので、たった1年しか製造年度に違いがありませんが、最初のブラックペイントのポイントとしてはM3を象徴する“福耳”です。基本的にはこれが最初なので“福耳”でブラックペイントのライカM3を持ちたいとなると、この100台になってくるというところです」

その100台の中でごく稀にカウンターまで黒いモデルが存在するということですね。ここに登場するサンプル機2台を見てみると、ブラックカウンターよりシルバーカウンターのほうが若い番号ですよね?

「ブラックカウンターの出現はランダムで、確認できるものに420番代、430番代があり、この機体は460番代と法則性がありません」

ブラックカウンターを採用したM3の謎

ライカM3ブラックペイントブラックカウンターの巻き上げレバーを撮影した写真

ブラックカウンター出現の法則性は謎ということは理解できました。

「あとは最近のライツオークションでブラックカウンターが出品されていましたが、あれは91から始まる番号帯でした。ライツ社によるとマーケティング部にブラックペイントを今後出すということで用意されたものが数十台存在していて、それが91から始まるM3ブラックで、なおかつブラックカウンターになったものだったそうです」

959で始まる、いわゆる正式なブラックペイントモデルを出す前のものもある?「はい、でも正式にはブラックペイントという記録がリストには載っていないんです」

ここがコレクションの終着駅ではない

ライカM3ブラックペイントブラックカウンターの底蓋を撮影した写真

底蓋のパーツからカウンターに至るまで真っ黒に仕上げられたライカM3で、さらに若い番号のものが存在するというのはコレクターにとって悩ましい問題です。「通常品のクロームの番号に中にちょこちょこと紛れて作られていて、その91から始まるものはダブルストロークで、これはシングルストロークになっています。同じブラックカウンターでも違いがあり、それはそれで最終目標になるのかなと(笑)」

これで終わりじゃないんですね!「その機体が今ここにご用意できないのがすごく残念なんです(笑)」

年代を合わせた黒塗りのレンズがよく似合う

ライカM3ブラックペイントブラックカウンターとレンズを並べて撮影した写真

では、このブラックカウンターの黒いライカM3に似合うレンズは?という問いかけに、丸山さんがコーディネートしてくれたのは前期型のズミクロン5cm F2のブラックペイント。もちろんマウントもブラックペイントです。

「ボディに関しては全体にすごく細かい泡がペイントに出ていてヴィンテージ感満載でありながら目立った窪みがないので、本当にこれから未来に向けて孫の孫の代までこれを維持していかないといけないなというような個体ではないかと思います」

1958年製で1年先輩の黒いズミクロンもすがれ具合がぴったり。レンズのコンディションも良いので写真が撮りたくなる組み合わせです。

まとめ

ライカM3ブラックペイントブラックカウンターにレンズを付けて撮影した写真

激レア中のレアモデル、ライカM3ブラックペイントファーストロットのブラックカウンター。拝観させていただいた実機はシングルストロークでラチェット機構なしのスプリングクラッチというライカM3の機構的分類では中期モデルで、すごく具合良く整備されています。これは世界遺産級の物件ですが、フィルムを装填して写真を撮りたくなってしまう危ないパターンですね。

「同じファーストロットでも、やはり人とは違うよという存在感が示せると思います。黒いカウンターはM5とCLを別にするとM6系の限定品ミレニアム2000などが出てくるまでは存在せず、王道のM3でブラックカウンターというのは価値があると思います」

黒いライカに取り憑かれてしまったコレクターの中でも、ごく限られた人にしか手にするチャンスが巡ってこないモデル。このカメラのオーナーになるには、それなりの覚悟が必要だと思います。

ご紹介のカメラとレンズ

ライカM3 ブラックペイント 959468 価格3,570万円

ズミクロン50mm F2 ブラックペイント 価格 680万円

※価格は取材時点での税込価格

案内人

ヴィンテージサロン コンシェルジュ:ライカフェロー 丸山豊
1973年生まれ。愛用のカメラはM4 ブラックペイント

執筆者プロフィール

ガンダーラ井上プロフィール写真

ガンダーラ井上

ライター。1964年 東京・日本橋生まれ。早稲田大学社会科学部卒業後、松下電器(現パナソニック)宣伝事業部に13年間勤める。2002年に独立し、「monoマガジン」「BRUTUS」「Pen」「ENGINE」などの雑誌やwebの世界を泳ぎ回る。初めてのライカは幼馴染の父上が所蔵する膨大なコレクションから譲り受けたライカM4とズマロン35mmF2.8。著作「人生に必要な30の腕時計」(岩波書店)、「ツァイス&フォクトレンダーの作り方」(玄光社)など。編集企画と主筆を務めた「Leica M11 Book」(玄光社)も発売中。

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